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3月31日(土) 谷中「ボッサ」

3月31日(土) 谷中「ボッサ」 ピアソラの再生~音と桜による心の調律~
柴田奈穂(Vn )、佐藤美由紀(Pf)

主催:再生の春
協賛:Beat Sound(株式会社ステレオサウンド)

【初共演の柴田奈穂さんによるレポート】


 谷中ボッサでは、満開の桜の時期にあわせて“タンゴ・ライヴ”を実施します。ブラジルの隣、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで約130年前に生まれた音、タンゴ。その長い歴史の中でも中でも、タンゴの革命児と言われたアストル・ピアソラの創造した音の数々は1992年の他界後も、 少しも色褪せる事無く、今だ世界中の人の心を捉えて離しません。今回お届けする音の演奏者はタンゴ、そしてピアソラの音を継ぐ二人、柴田奈穂さん(Vn)と佐藤美由紀(Pf)さん。憂愁の春に、新しい形でピアソラ、そしてタンゴの魂を再生します。
by 主催:再生の春


・・・というキャッチフレーズで東京谷中で行われたこのライブ、 昨年リリースしたCD「ブエノスアイレスの冬」を関西に住む奥井さんが聞いてくださったことがそもそもの始まりでした。奥井さんは、何年か前に大阪でライブをした時に聞きに来てくださって出会った、かわいらしいけれども、知的な部分とタフな部分を併せ持つ魅力的な方。ある日、そんな奥井さんからメールが届きました。私のCDに収録されている「タンゴと桜」という、私も大好きなこの曲を、奥井さんがとても気に入ってくれて、東京在住でタンゴの話題で仲の良い知人石山さんに紹介してくれたこと。石山さんもその音源をとても気に入ってくれて、なじみのお店「谷中ボッサ」に持っていってくれたところ、お店のマスターも気に入ってくれたこと。石山さんが、ライブのプロデュースなどはやったことがないけれど、桜の満開の時期に演奏しに来てほしいと希望してくれていること。その会場はほかでもない、「谷中ボッサ」をイメージしていること。実現すれば、もちろん奥井さんも関西から聴きにいく意志があるということ。そこにはこんなことが丁寧にしたためられていました。すぐにやらせていただく方向で考えると返事しました。
奥井さんからいただいたそのメッセージには、「多少のリスクなどどうでもよく、この出会いを大切にしたい」そんな風に感じさせる夢がありました。 私にとってちょこっと大変な時期でもあったので、そんな風に大切に自分の音を聞いてくれた方がいることは大きな励みになりましたし、 心の底から聞きたいと言ってくれているその純粋さに本当に気持ちがあらわれるようでした。そして、Beat Sound(株式会社ステレオサウンド)武田さんの多大なるご協力のもと、このライブが実現しました。東京の人気タンゴバンド El Fuelle 「エルフエジェ」の佐藤美由紀さんに共演していただけませんか、とお願いしたところ、快く引き受けてくださったのです。このライブが美由紀さんとの初めての共演でしたが、これがきっかけとなり、エルフエジェの東京ツアーにも参加させていただくことになったようなもので、 私にとっては本当に本当に出会いの宝物のようなライブでした。選曲も、私の持ち曲とEl Fuelle のレパートリーから出し合う形で決めていきました。奥井さんも石山さんも、大切に大切に企画を暖めてくださって、いよいよ当日。予想通り、東京は、満開の桜が咲き誇る春の日でした。それはまさに、奥井さんいわくの「狙いどおりの完璧なシチュエーション」だったのです。
谷中ボッサは30人も入ればいっぱいのアットホームな空間で、木の雰囲気がとても心地よい素敵な店でした。石山さんがなぜこの店を選んだのか、分かるような気がしました。奥井さんも関西から駆けつけてくれました。武田さんがPAをセッティングしてくださってリハをざっとやると、間もなく開演時間。春の風がやさしく香る中、桜のトンネルを抜けてきたお客さんたちが続々と集まってくれました。夜もすっかり更けてきて、いい雰囲気。所狭しと並べられた椅子に、これまたところ狭しと座ってくださったお客さん達。石山さんと奥井さんは交代で客席に出てきて演奏に耳をすましていました。終盤にさしかかり、このライブをやるきっかけになった「タンゴと桜」を演奏すると告げると、いろいろな思いがめぐりました。この曲はCDのプロデュースもしてくれたバルコスさんが私にプレゼントしてくれた曲です。共演の美由紀さんは夜桜のイメージと言っていました。わたしも、この曲を演奏する時は静かな情景から始まり、そのうちに膨大な桜の花びらが激しく空に舞い散る様子をいつも思い浮かべています。タンゴに魅せられて音楽の道に進みバルコスさんと出会い、そのピアノに惚れてアルゼンチンに行って、この曲をもらってレコーディングしたこと、 それを聞いてくれた奥井さん。それから広がって石山さんや武田さんと新しい出会いが生まれたこと、そして今回初共演となった佐藤美由紀さんという素晴らしいピアニストに出会えたこと、 この店で、今ここで演奏できる喜びや、そこにお客さんが聴きにきてくれたこと。すべてすべてつながっている。演奏直後は、ガラにもなく目頭が熱くなって、少し泣きたくなりました。この一つの曲が、この出会いを生んだのだと思うと、震えがきました。
後日、雑誌「Beat Sound」にこのライブの模様がCDと一緒に見開き2ページにわたって紹介されました。雑誌の中にも、「CDに記録された一曲が人の生き方や周囲の人間の心まで突き動かす原動力になることがある・・・」とありますが本当にそのとおりだなって思います。私はこの日、その空間と企画してくれた皆さんと、お客さん、共演してくださった美由紀さんのことが大好きになりました。来て下さった方々、関係者のみなさん、どうもありがとうございます!!石山さん、奥井さん、武田さん、お疲れ様でした。感謝!!

【ミユキレポート】
 このライブでの共演がキッカケとなり、柴田さんが関西ツアーへの礎を築いてくださいました。ミユキタンゴがツアーバンドとして歩みだす、初めの一歩となりました。