1月19日(金)東向島「プチ・ローズ」
佐藤美由紀(Pf)、 早川純(Bandoneon)、スズキイチロウ(Gt)
【ご来場くださった方のレポート】
先週の金曜日の夜、「エル・フエジェ」のライブに顔を出した。第2部を丸々ゆっくり鑑賞できた。 今回はバンドネオン(早川純)・ギター(スズキイチロウ)・ピアノ(佐藤美由紀)の三重奏。昨年11月11日にこの編成で初めてライブを行ったが、演奏者が「どえらい演奏」と自賛し、聴衆が絶賛する奇跡のライブであった。 昨年末には五重奏でのライブで調子を落としていたようなので、馬の状態を確かめにパドックまで様子を見に行く心地であった。結論から言えば、何も心配することはなかった。昨年11月11日の時よりも肩の力が抜けて、すっかり意気投合している様子であった。
昨年11初頭からこのバンドを集中的に観察してきたが、どうやらキーワードは「即興演奏」である。主要メンバーの意識は「タンゴの旋律を使って即興演奏すること」「タンゴでジャズをやること」にあることが明確になってきた。金曜日のライブでは、パット・メセニーの「アントニア」というジャズ系・フュージョン系の楽曲を披露し、より旗幟を鮮明にした。定番の「パロミータ・ブランカ」でも、いつもより即興性が前面に現れていた。 メンバーの1人は「このバンドはロックだね」とおっしゃったそうだ。ご本人の意図は不明だが、私には反骨精神という意味に取れた。ジャズとタンゴの境目を追求することは、双方から誤解され敵視される危険を孕んでいる。だが伝統的ジャンルの範疇でやり残した課題に挑むことは、もっと評価されていいと思う。辛い局面もあるだろうが、反骨精神を持って果敢に乗り切ってほしい。
「エル・フエジェ」は2月2日(金)に大きなライブを控えている。1stCDの発売記念ライブである。私が顔を出せなかった1月11日(木)は会心の出来だったようだ。即興演奏に比重を置くバンドではコンディショニングが重要になってくるが、こういう鼻息の荒さが出てくるところを見ると、調整は順調のようだ。五重奏編成で、かつCDに寄り添うライブということで、即興演奏は抑えられると思われるが、当日は存分に持ち味を発揮してほしい。(Tさん)