4月3日(火)代官山 「Candy」
佐藤美由紀(Pf)、早川純(Bandoneon)、スズキイチロウ(Gt)、清水良憲(Cb)、柴田奈穂(Vn)
【ご来場くださった方のレポート】
一昨日はエル・フエジェ(El Fuelle)の代官山“CANDY”ライブに顔を出した。何とか21時開始の第2部に滑り込んだ。 エル・フエジェ(El Fuelle)は4月に東京・関西・名古屋で1st CD“MIYUKI TANGO”発売記念ツアーを敢行する。ヴァイオリンの江藤有希さんが腱鞘炎の治療で休養中のため、今回のツアーでは大阪在住のタンゴヴァイオリニスト・柴田奈穂さんが参加する。代官山ライブは東京ツアーの締日になる。
エル・フエジェ(El Fuelle)の持ち味は大胆な即興演奏にある。この日の中では「ラ・ラジュエーラ(石切り遊び)」が秀逸だった。最初の数分は何の曲だか全然分からず、CDに収録されている音とのあまりの違いに驚いた。ライブならではの醍醐味であろう。 ヴァイオリンの柴田さんは、アルゼンチンに渡ってフェルナンド・スアレス・パス(アストル・ピアソラ五重奏団最後のヴァイオリニスト)に師事したという本格派。時々前傾して楽曲にのめり込んでいく姿勢と相俟って、タンゴらしい粘性の高い音を奏でていた。 江藤さんの場合はショーロ(ブラジルの伝統音楽)でも活動している影響か、柴田さんほど粘性は高くない。個人的にはギドン・クレーメルのような端正であっさり目の演奏だと感じている。 さて、私はしばしば「トロイデ⇔アスピーテ」という基準を用いている。トロイデ(鐘状火山)は粘性の高い溶岩が垂直方向に積み重なった火山、アスピーテ(楯状火山)は粘性の低い溶岩が水平方向に拡がった火山を指す。現在の火山学ではこの用語は修正されているそうだが、素材の粘性と結果の形状を同時に取り扱えるこの基準は重宝している。さらには複数の対象で「トロイデ⇔アスピーテ」軸を組み合わせることによって、様々なマトリックスを切ることが可能である。 単純に見ると、柴田さんの音質はトロイデ寄り、江藤さんの音質は真ん中ないし少しアスピーテ寄りだが、どうも事態はそれほど単純ではなさそうだ。演奏後に柴田さんと少しお話したが、これほど即興演奏を自由にやらせてもらったことは初めての経験で、楽しかったという。今後のツアーの中で柴田さんは、演奏形態における従来のタンゴ的トロイデ(譜面弾き)からエル・フエジェ(El Fuelle)流アスピーテ(即興演奏)にどれだけ順応して新しい自分に目覚めてゆくのか、興味津々である。 短期間に仕上げたとはいえ、エル・フエジェ(El Fuelle)with柴田奈穂としては、まだ細かい部分で修正の余地があるように見受けられた。さらに熟成させて飲み頃・聴き頃になるのはツアー後半あたりになろうか。この辺の事情は初日より楽日の方が良く仕上がっている歌舞伎公演と同じであり、あまり心配していない。 ツアーが終わる頃にはエル・フエジェ(El Fuelle)は大きな引き出しを手に入れていることであろう。更なる活躍を祈念申し上げる。(Tさん)
【Vn柴田奈穂さんによるレポート】
東京最終日、代官山のCANDYはとっても豪華なお洒落なお店。先日の谷中でお世話になった石山さん、そして2月に松竹のドラマ撮影の仕事でご一緒した女優の岩本美祐紀さんも応援にかけつけてくれました。新たな出会いもたくさんいただきました。陶芸家の瀧田さんもありがとう~!!「ブエノスアイレスの夏」は燃える!!ほかほかした気持ちで東京をあとにした。素敵な出会いに恵まれたとてもきらきらしていてあたたかい一週間になり、 一週間後に関西でもう一度このメンバーで演奏できるのがとても楽しみだった。